KING強介(ロイヤルキングス)インタビュー

インタビュー

公開日:2018/7/29

聞き手 茂田浩司
写真提供 KING強介

試合11日前に第4子誕生! 「また、負けられない理由が出来た。宮元啓介選手には沈んで貰います」

 8月3日、東京・後楽園ホールで行われる「REBELS.57」では、格闘技ファン垂涎の好カードが実現した。長く地方で活躍した後、昨年からREBELS(レベルス)に参戦しているKING強介(きんぐきょうすけ)と、55㎏級の日本トップ戦線で好勝負を連発している実力者、宮元啓介(橋本道場)の1戦である。
 KING強介が自慢の強打で倒してしまうか、宮元啓介がこの階級屈指のタフネスで耐え抜き、無尽蔵のスタミナで圧倒するか。
 熱心なキックボクシングファンとして知られ、REBELSを欠かさず観戦している漫画家の森恒二先生(「ホーリーランド」「自殺島」「創世のタイガ」)は「この試合は面白い!これは裏メインですよ!」と大いに期待をしている。
 早速、KING強介に連絡を取り、試合に向けた意気込みを聞こうとしたところ、KING強介の第一声は「産まれました!」。
 産まれた……?






予定日より早い出産。
「試合と重なってしまう心配もあったので、これで試合に専念できます。親孝行な子です」



 「こういうタイミングって重なるものですね……」
 平成最後の夏の出来事を、KING強介はおそらく生涯忘れることはないだろう。
 「爆腕ビッグダディ」KING強介には、すでに3人の子供がいるが、この夏、第4子が誕生することとなった。問題は、出産と、8月2日の計量、8月3日の試合が重なる心配が出てきたことだった。

「予定日は7月29日でした。嫁さんのお腹がだいぶ大きくなって、お腹の中で3700グラム越えていたんで、病院で『予定日前に出てくるんじゃないですか?』って言われたんですけど、こればっかりは分からないですからね。嫁さんが出産で3、4日入院している間、あとの3人の面倒は僕が見ることになるんですけど、8月2日は朝から移動して東京で計量(吉祥寺第一ホテルでの公開計量)、8月3日に試合ですから。もし、それと重なってしまったらどうしようか。一時は、僕が3人の子供を連れて東京に行くことも覚悟しました(苦笑)。
 知り合いは『預かるよ』って言ってくれるんですけど、3人まとめてお願いしないといけないですからね(笑)。僕が面倒を見てても大変で、フラフラになる時もあるのに(苦笑)、3人まとめて面倒を見てほしい、となると気軽に頼めないですし。どうしようかなって心配してました。
 でも、試合の時って、不思議といつも何かしらと重なるんですよねぇ」

 きっと、パパとママの心配を察したのだろう。
 お腹の子は予定日より1週間早く、7月23日に無事に産まれてきた。生まれながらにして親孝行な子供なのだ。
 KING強介からは、自宅で4人の子供たちと撮った写真が送られてきた。

「5歳の長男が海琉(かいる)、3歳の次男が琉輝(りゅうき)、1歳の長女が琉美南(るみな)、次女がこれからです(笑)。
 予定日より早く産まれてきてくれたら助かるな、とは思ってたんですけど(笑)。末っ子なんで、こちらの都合とかは関係なく、勝手に産まれて来るのかな、って思ってたら、1週間早くて親孝行です(笑)。これで試合に集中できますし、また、負けられない理由が出来ました。
 試合の方も、どうしても越えないといけない場所。本当にキックも、プライベートも、両方とも高い山ですけど、同じタイミングでこうも立て続けに来るんですね。
 試合は待ってくれないですし、コンディションを上げて『必死のパッチ』(*関西エリアでの「一生懸命」の最上級語。はてなキーワードより)で頑張っていきます」

 8月3日(金)「REBERLS.57」のセミファイナルに組まれた「KING強介vs宮元啓介」は、強介にとってまさに長く待ち続けたビッグチャンスなのである。






以前は「ベルトを獲った、その先」がなかった
今、REBELSでは次のステージが用意されて、モチベーションは最高潮に上がっている



 KING強介がキックを始めたのは26歳。ずっと格闘技が好きで、やってみたいと思っていたが、近くにジムがなく、格闘技を始めるチャンスがなかった。ロイヤルキングス総帥、KING皇兵と出会い、キックを1から教わり、27歳でプロデビューを果たす。
 以来、いくつかのタイトルを獲り、今年2月、待望のREBELS初参戦を果たす。

 強介は「西からREBELSのリングを荒らしに来ました!」と宣言すると、長くREBELSの軽量級を牽引してきた炎出丸(クロスポイント吉祥寺)と対戦。タフで鳴らす炎出丸に得意の右の強打を浴びせて2度のダウンを奪い、大差を付けて判定で勝利した。
 さらに、4月のREBELS.55では、こちらも強打に定評のあるKOUMA(ウィラサクレックフェアテックスジム荒川)の持つREBELSーMUAYTHAIスーパーバンタム級タイトルに挑戦。「殴り合い上等」のKOUMAは真正面から打ち合いを仕掛けたのに対し、強介は左フックのカウンターを狙い、すぐさま組みついてKOUMAの追撃を封じる。ペースの掴めないKOUMAが強引に前に出たところに、強介の左フックがKOUMAのアゴを打ち抜き、ダウン。ふらつきながらも立ち上がったKOUMAに、強介はパンチの連打を浴びせて2度目のダウンを奪うと、レフェリーは試合を止めた。濃密な3分間の攻防を制し、KING強介はREBELSのチャンピオンベルトを巻いた。

「REBELSさんに参戦して、2戦目でタイトルマッチをやらせて貰えたことにまずびっくりしましたし、KOUMA選手のパンチが強いのも本当にびっくりしました(苦笑)。ただ、KOUMA選手が『パンチが強い』ということは前から聞いてたので、想定内といえば想定内。パンチとタテヒジをまぜて攻めてくるイメージで、実際にヒジで切られてしまいました(苦笑)。
 『KOUMA選手の入り際の隙を狙う』のは作戦でした。KOUMA選手は踏み込んでパンチを打ってくる時にガードが空くんで、そこにドンピシャで左フックを合わせられました。作戦が上手くハマって、あのカウンターを決められたのはちょっと自信になりましたね(笑)」

 試合後、強介は「REBELSのリング」での戦いに対する反応に驚いたという。

「自分のことを知って貰えるようになったんだな、と実感してます。知名度が上がりましたし、気にして貰えることが多くなりましたね。地方で試合してるのとは全然違いますよ。ベルトを獲ろうが何しようが、全然知られなかったのに(苦笑)」

 KOUMAvsKING強介の反響は、YouTube「REBELS TV」の再生回数にも現れている。梅野源治や小笠原瑛作の試合は別格として、KOUMAvsKING強介はすでに1万回に迫る勢いで、他の試合動画と全く違う伸びを示している。

「REBELSさんで2試合しただけですけど、SNSで名前を出して貰っていたり、少しずつ『KING強介』がファンの方々に名前を知られてきた実感があります。やっぱり頑張りがいがあるし、やる気が出ますよ。『もっと東京で結果を残したい』という気持ちも前より強くなってますね」

 KING強介のモチベーションを大いに刺激することがもう1つある。それは、REBELSの山口代表のマッチメイクである。

「僕はこれまでにもチャンピオンベルトを獲ってきましたけど、ベルトを獲っても『その次』が見えなかったです。チャンピオンになっても何の発展もなくて『これから』の話もない。ベルトを巻いて『え、今後はどうなるんやろう?』って(苦笑)。
 それが、REBELSさんではベルトを獲ると山口代表が『次のステージ』を用意してくれている。これでもっとやる気が出ましたし、モチベーションはものすごく上がってますね」

 チャンピオンのKING強介に、今回、山口代表が用意したのが55㎏級で日本のトップクラスと戦い続けてきた実力者、宮元啓介(橋本道場)との対戦である。
 このマッチメイクに、強介の闘志はさらに燃え上がった。

「僕の人生のターニングポイントで、重要な1戦です。こんなにどんどんチャンスが貰えるなんて、去年の今頃は全然考えられなかったですよ。
 宮元選手は必ず越えなければいけない相手だと思ってます。ここを越えないと、キックボクサーとしての僕に先はないです。今は『絶対に越えないといけない』という思いだけで、宮元選手しか見えてない。その先なんて何も見えてないです」

 宮元啓介の過去の対戦相手は、那須川天心、小笠原瑛作、小笠原裕典、江幡塁、高橋亮ら55㎏のトップクラスがずらり。中でも、昨年12月のKNOCKOUTでの江幡塁戦は宮元の驚異的なタフネスぶりをキックファンに知らしめた。

「宮元選手は本当にタフですね。我慢強くて、まったく表情に出ない。江幡戦の映像を見ましたけど、すごくいい攻撃を貰っているのに絶対に前進をやめないんですね。鬼気迫るものを感じたし、宮元選手の中には『死んでもいい』みたいな気持ちがあるのか。映像を通しても伝わってくるものがありました。
 僕とすれば前半勝負で1、2、3ラウンドで倒さないと。4、5ラウンドになると宮元選手がバケモノみたいに出てくるので(苦笑)。ただ、練習は5ラウンドまで戦うことを想定してやっていますよ。
 でも、5ラウンドを通しての削り合いになれば、宮元選手が上でしょう。試合をイメージするんですけど、イメージすればするほど4、5ラウンドで削られまくってる自分が浮かんでくる(苦笑)。ガードも固いので、さあどうしましょうか、って毎日悩みながら練習してます。
 この試合は、僕にとって絶対に負けられない戦いですよ。チャンピオンになって、REBELSさんの看板を背負わせて貰って一戦目。それで、これだけ素晴らしい選手が揃ってる中で、僕と宮元選手の試合がセミファイナルですから。山口代表に期待されているのが分かるし、必ず期待に応えたいですね」

 強介には、恵まれない練習環境の中でも結果を出して、のし上がってきた「叩き上げ」の意地とプライドがある。

「以前は、週2回しか練習日がなかったんですよ。だから、それ以外の日は走ったり、シャドーしたり自主練です。トレーナーもいないので、自分で考えて。今考えると、よく週2の練習で勝ってこられましたよね(笑)。
 今は、本当に練習環境が良くなって、週5、週6で練習できるようになりましたし、いろんな人に協力して貰って、スパーで本番を想定した実戦的な練習が出来ています。仕事して、練習して、練習が終わるとしばらく疲労と脱水で喋ることも出来なくなりますけどね(苦笑)。だから、練習中は集中力を切らさないようにやってます。
 最後は『気持ち』ですね。ずっと気持ちだけで戦ってきましたし、練習環境が良くなった今も『気持ちだけは負けんとこ』っていうのはずっと思っていますね。
 宮元選手との試合は、確実に、どう転んでも激闘になるでしょう。宮元選手は絶対に下がらないですし、僕も倒さないと勝てないと思ってるので攻めていきますから。今、フィニッシュブローを磨いてて、それが決まれば倒せると思います」

 KING強介には、他の選手にはない「ハングリーさ」がある。

「僕は、ずっと地方で、誰にも注目もされなかったですけど地道に頑張ってきて、やっとREBELSさんで大きなチャンス貰えました。チャンピオンになってから『その先』のステージがあるのも嬉しいですし、もっともっとREBELSを盛り上げたい。そうして、僕ももっと知られるようになりたい。
 だから、宮元選手にはリングに沈んで貰います。インパクトを残す試合をして『KING強介』を格闘技界で知らない人はいないぐらいの存在に持っていきます。
 そういえば、炎出丸選手のインタビューを読みました。僕が炎出丸選手に火を付けた? 嫌ですよねー。ずっと追いかけてきたんで、逆に追いかけられることに慣れてないんです(苦笑)。だけど、僕の存在がREBELSさんの活性化につながってるなら、本当に良かったですね。
 宮元啓介選手との試合は必ず『見に来てよかった!』と思って貰える激闘になりますし、最後は僕、KING強介が勝って、REBELSをもっと盛り上げていくんで。8月3日は、ぜひ後楽園ホールで応援をよろしくお願いします」

プロフィール
KING強介(きんぐ・きょうすけ)
所  属:ロイヤルキングス
生年月日:1984年6月6日、34歳
出  身:兵庫県神戸市出身。
身  長:163cm 体  重:55㎏(試合時)
戦  績:29戦15勝(8KO)13敗1分
REBELS-MUAYTHAIスーパーバンタム級王者

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