4.27 REBELS.55インタビュー

インタビュー

公開日:2018/4/3

聞き手・撮影 茂田浩司

良太郎、王者として臨む初戦
「REBELSの看板を背負わせて貰った以上、興行の力になるいい試合を見せたい」

 昨年11月24日のREBELS.53でおこなわれたREBELS-MUAYTHAIライト級王座決定トーナメント決勝戦で、強打のピラオ・サンタナ(メジロジム)からダウンを奪い、判定勝利を収めてベルトを巻いた良太郎(池袋BLUE DOG GYM)。
 良太郎がベルトを巻く姿を見て、セコンド、教え子、応援団の誰もが泣いた。良太郎自身「28年生きてきて、人生最良の日」とリング上で涙した。
 感動の戴冠劇から5か月、王者として臨む初戦はオランダの新鋭パスカル・コスター(オトマニジム)。良太郎はどんな戦いを見せようと思っているのか。千葉県鎌ケ谷市のteam AKATSUKIを訪ねた。






「チャンピオンになってから、よく会場で声を掛けられる。
特にKrushに行くとめっちゃ話しかけられますよ(笑)」



 昨年11月、念願のREBELS-MUAYTHAIベルトを巻いた良太郎。だが、その日常は以前と何ら変わりはなく、激闘のタイトルマッチの翌日から、今度は「指導者、トレーナー良太郎」として忙しい日々が待っていた。
「ベルトを取った週末から年内は毎週試合でしたよ(笑)。team AKATSUKI(良太郎が主宰する千葉県鎌ケ谷市のジム)は毎年大みそかも『蹴り納め』をするんですけど、今年は闘士さんの試合があったので(1・27 Krush、3・21 K-1)、三が日以外はずっと指導と練習です。もう慣れましたけどね」
 池袋BLUE DOG GYMやteam AKATSUKIの選手の試合には必ず足を運び、仲間や教え子のセコンドをしながら、他の有力選手の試合を欠かさずチェックする良太郎。会場に行くと以前と違う反応があったという。

「選手とか関係者はみんな顔見知りなんで『チャンピオン、おめでとう』って言われましたけど、REBELSでベルトを巻いてから会場で一般のファン、特にKrushではめっちゃ話しかけられますね(笑)。『僕はメイドインREBELSだけど、今日Krushなのに大丈夫?』って一度は断ります(笑)。普段の僕に話しかける勇気もすごいと思うんですけど(笑)、やっぱりREBELSの硬派なマッチメイクがキックのファンに届いているんだな、と思いますよ。こないだのREBELS.54(2.18後楽園ホール)は当日券売り場に行列が出来ててびっくりしました。ああいう光景を僕は初めて見ましたよ」
 梅野源治のルンピニー王座戴冠に期待して、後楽園ホールに詰めかけた観客の姿を、教え子の濱田巧(REBELS-MUAYTHAIスーパーフライ級リーグ戦参戦中)のセコンドとして目の当たりにして、改めてREBELSのベルトを巻けたことの喜びを噛み締めた。

「コツコツといいカードを組んで、地力を固めて、ああいう盛り上がりまで持っていくのは大変だったと思います。そのREBELSさんでずっと使って貰って、育てて貰ったのは本当にありがたいことですよ。だから、REBELSのベルトはどうしても巻きたかったんです。
 サンタナに勝って、ベルトを巻いた時は興奮よりも安堵ですね。『ベルトを取れる』と思って取りましたけど、山口代表を見て、泣いてるセコンドや教え子を見て『あ~よかった。これは負けてたらダメだった』って。

 昔、喧嘩をしてた頃は地元対他元(たもと)の抗争がある時、僕は地元メンバーの代表として出ていって、こっちは地元の先輩がいて、他元にはそっちの先輩もいる。あの空気感は嫌いじゃないんですよ(笑)。
 僕にとっては、人生において一番勝負をかけるポイントだったんで。ずっと勝ってきた選手じゃないし、だけど、REBELSさんで育てて貰って、最高のタイミングで組まれたトーナメントでしたから。僕は『最終的に自分は何を望むか』で、一番欲しいものを取れることが大事だと思ってるんで。それがサンタナという最高の選手が反対ブロックから上がってきてくれて、最高の舞台で戦って、勝って欲しかったベルトを取れた。山口代表やうちの会長や、いろんな人たちの期待に応えられて本当にホッとしました」






怪物サンタナの強打に耐えた裏には、緻密な練習計画と
「4ラウンドまで行けば」という自信



 昨年のインタビュー(【REBELS.53】「元藤ジム内弟子。現在、選手兼トレーナー兼チーム代表」良太郎(池袋BLUE DOG GYM所属、team AKATSUKI代表)インタビュー)で触れたが、REBELS参戦以前の良太郎は練習環境が悪く、黒星先行の選手だった。
 だが、池袋BLUE DOG GYMに移籍し、team AKATSUKIの代表として活動を始めると、REBELSを主戦場にコンスタントに試合経験を積み、実力で頭角を現した時にライト級王座決定トーナメントが始まった。とはいえ、決勝戦の相手は強打で鳴らすピラオ・サンタナ。過去最強の相手であることは間違いなく、良太郎はサンタナを研究し、サンタナに勝つために、それまでの練習方法を一新し、タイトルマッチに勝負をかけた。

「初めて『マイナス』の練習をする計画を立てて、その通りに出来たのは僕にとっていい経験になりましたね。
 サンタナに対して『あれもやって、これもやって』という練習をしていたら、多分、僕は勝ててないです。サンタナに対してはワンツー、前蹴り、ヒジだと使う技を絞って、試合でやることだけを練習したんです。他の技は練習でも極力省いてました。ミドルを蹴ったって、絶対に大振りのパンチを合わせられるんで。
 これまではどんなにオーバーワークだろうが『必ずこれをやる』って決めて、試合まで1日2部練、3部練をやってました。10代や20代前半の選手ならそれでいいと思うんですけど、僕もあの時は28歳ですけど、量よりも1回の練習の質を高めることにしたんです。これまでひたすら『量』をこなす練習をして試合に臨んでいたんで多少の怖さはありましたけど、3部練をする日も昼がフィジカルなら夕方はがっつりミット、夜は対人多め。メニューを細かく変えてやりました。
 みんなにも言ってるんですけど、スパーの時、最初は自分の力を誇示したくて『そいつをぶっ倒す』でもいいですけど、スパーの相手と試合をやるわけじゃないんで。スパーでは多少打たれようが『試合でやる動き』をハメていく。そうすればガチスパーの数はそんなに増えないし、スパーで繰り返した動きが試合で出るようになる。
 とにかく練習では欲張らないで、サンタナに勝つためだけの練習に絞って、それが試合で出来ましたね」

 サンタナは大振りのフックで距離を詰め、接近すると良太郎のガードの隙間を狙ってアッパーを打ち込んだ。何発か被弾し、唇は腫れあがったが意識を断ち切られることはなかった。

「試合前に想定したサンタナのパンチが『金属バットでぶん殴られるぐらい』だったんで(笑)。アゴにさえ直撃されなければ大丈夫だろうと思ったし、実際にガードの上から喰らってみたら想定内でした。試合の後、みんなに『よく死ななかったね』と言われましたけど(苦笑)。
 驚いたのはミドルを蹴った時です。1発目のミドルで自爆した感じになって、一瞬『変なところを蹴ったかな?』と思ったんですけど、2発目で分かったんですよ。『コイツの体が強いんだ!』って。骨格がしっかりしてて、いいところに蹴っても自分の足が痛くなる。元々ミドルを蹴るつもりはなかったんで、ミドルは捨てて、前蹴りに切り替えました。
 見えなかったのは1発目のアッパーです。一瞬、すごいしゃがんで溜めたんで『何してくるんだ? 回り込んでくるのか?』と思ったら、足元からガードの隙間を目掛けてガチン、とアッパーを打ち込んできた。あれ『はじめの一歩』のガゼルパンチですよ(苦笑)。一発で鼻を持っていかれて(苦笑)あれは痛かった」

 ただ、良太郎にはサンタナの放ったアッパーに見覚えがあった。MMA出身のサンタナならではのパンチなのだという。

「KIDさんが得意な、MMAの選手特有のアッパーなんです。MMAの選手のミットを持つと、彼らはストレートやフックよりもアッパーの方が強く打てます。レスリングとか組み技をやってて、広背筋が発達してる選手は特に教えなくても強く打てるんです。だから、あのアッパーはサンタナが得意としてきたパンチなんでしょうね」

 サンタナの強打をガードしつつ、要所では前蹴り、ワンツー、組みついたらヒジ。少しずつ、コツコツとサンタナの体力を削っていき、迎えた勝負の4ラウンド。良太郎は渾身のワンツーでサンタナからダウンを奪う。
 このダウンも「想定通り」だった。

「教え子たちには『4ラウンド目にダウンを取るから』って言ってました。予知夢じゃないけど、上の選手たちには試合のイメージが見えて、実際にその通りに進むというのがあるんですけど、僕も今回はそんな感じでしたね。
 本当に『これは僕のためのトーナメントだ』と思っていたし『絶対に4ラウンドで倒せる』っていう自信もあった。僕は元々全日本キックを見てた人間で『ちゃんと練習してる人、がっつりと基礎のある人と、そうでない人の差が出るのは4ラウンド目だな』というのが分かってたのもありますけどね。スタミナと練習量には絶対的な自信もあるんで、見に来てくれる人にも『4ラウンドまで引きずり込めたら自信あるから』って。ただ『ダウンを取った後も、いつものバチバチは期待しないでくれ』とも言いましたよ(笑)。今回はとにかくベルトを取りに行くんで、一か八かの殴り合いをするんじゃなくて最後まで自分の作戦をきっちりと遂行しないと。相手がサンタナですから一発でも貰ったら終わるんで。
 ただ、やってる時は爆弾処理の感覚で楽しかったですよ(笑)。『こんな馬力のあるパンチをどう貰わないようにすればいいんだよ』と思いながら、実際に3回ぐらい爆発させちゃいましたけど(苦笑)」






王者としての初戦、パスカル・コスターに
良太郎はどう戦うのか?



 REBELS.55での対戦相手はパスカル・コスター。所属するオランダのオトマニジムは、良太郎にとって馴染み深いジムだ。
「Facebookでオランダの遠藤さんと繋がって、ある時『オトマニジムの選手が日本で試合するからヘルプしてくれないか』と頼まれたんです。それがK-1で大雅とやったソフィアン・エラージで、オランダだと体重が軽すぎて相手がいないんです。大雅との試合も下手したら3キロアンダーぐらい。フライ級の選手ですけどすげえ強かったですよ。
 で、試合当日にヘルプに行ったらトレーナーの巻いたバンテージがクソ下手で(苦笑)。オトマニの会長が『どうしようか?』となって、俺やるよ、って巻いたら気に入ってくれて。それ以来、オトマニの選手が来ると僕はバンテージを持参して巻いて、アップを手伝って、と全部やります。ギャラ?オトマニのTシャツをくれますよ(笑)。バンテージは僕が用意しているんで、大赤字ですけどね」

 王者になっての初戦。相手はオトマニジムのパスカル・コスター。
「オトマニの選手はみんな会っているんですけど、パスカルだけは知らなかったです。移籍組らしくて、元々オランダでテコンドーか何かで5回優勝してて、基礎はルシアン・カルビンさんのジムでやったみたいです。今、オランダはエンフュージョンという団体が勢いがあって、それでオトマニに移籍したらしくて。
 パスカルは典型的なオランダのキックボクサーですね。左右両方出来て、時折回転系の技を混ぜて、守りはブロッキング。フィジカルで1、2はガンガン押して、3でガス欠を起こす。
 5ラウンドなら…、僕は結構「5で」と押したんですけどね(笑)。僕のスタイルで3ラウンドだと、エンジンが掛かるぐらいで終わってしまうんですよ。かといって、5ラウンドタイプの選手が3ラウンドにアジャストしようとして、1ラウンド目にポカするパターンを死ぬほど見てきたんで(苦笑)。
 今回もいつものように体を仕上げて、毒を刺せるところは刺して、仕留められたら、と思ってます。『最初からガンガン行きます!』とは言わないですよ。ヤツらは1ラウンドはものすごく元気ですからね(苦笑)。ヤツらの思惑通りになっちゃうんで。
 サンタナとの試合の経験は大きいですよ。カッとなって、バチバチに殴り合う試合じゃなくて、使う技を絞って、プラン通りに進めて、勝負どころで勝負する。パスカルとの試合も、そんな風に、ベルトに見合う試合、REBELSという硬派な興行で、興行の力になれるような、いい試合を出来れば、と思ってますね。
 あとは、スーパーフライ級リーグ戦に参戦させていただいてる濱田巧(team AKATSUKI)がいかに普段通りの試合をするか(苦笑)。本人は否定しますけど、前回のREBELS.54は超満員の後楽園ホールの雰囲気に飲まれていつもの試合が全然出来なかった。  僕ももちろん頑張りますけど、濱田巧のこともぜひ応援してあげてください。アイツが普段の力を出せば、絶対に盛り上がる試合になりますから」

プロフィール
良太郎(りょうたろう)
所  属:池袋BLUE DOG GYM
生年月日:1988年12月21日(29歳)
出  身:千葉県柏市出身
身  長:178cm、体重:61kg(試合時)
戦  績:25戦11勝(4KO)10敗4分
タイトル: REBELS-MUAYTHAIライト級王者、TRIBELATEライト級王者

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