宮越慶二郎選手 インタビュー公開!

インタビュー

公開日:2016/1/18

2016年1月24日(日)にディファ有明で行われます「REBELS.40」にて、ヤスユキ選手と対戦いたします、宮越慶二郎選手のインタビューを公開させていただきます。

「ヤスユキ戦は間合いの勝負になる。1Rの間合いを制した方が勝つ」

聞き手:布施鋼治

──西武池袋駅狭山ケ丘駅から徒歩30分。今回初めて宮越道場にお邪魔しましたけど、1階が道場で2階は自宅なんですね。

宮越 ハイ。もともと父は士道館で選手をやっていたんですけど、引退後は普通のサラリーマンをやっていた。でも、引っ越す時に道場を作りたいということになったんですよ。ちょうど僕が小2の時でした。

──自宅にこんな大きなスペースがあったら格好の遊び場にもなりますよね。

宮越 たまり場でしたね。友達が集まってみんなでゲームボーイとかをして遊んでいました。お兄ちゃんと防具をつけて殴りっことかもしていましたね。

──そのお兄さんとは、WBCインターナショナルスーパーウェルター級王者の宮越宗一郎選手ですね。

宮越 ハイ。3つ違いなんですけど、昔からボコボコにされていました。お互い体が大きくなるにつれケンカはしなくなったけど、いまだに怖いし、逆らえない(苦笑)。

──兄弟仲は?

宮越 悪くもなく良くもなく。ほどほどですが、練習は一緒です。練習の時には助け合っています。今回は僕が試合なので、兄にはミット持ちやスパーの相手をしてもらっています。部屋も別々だし、プライベートでそんなに会話することもない。性格も違う。僕は目立ちたがり屋だけど、兄は控えめなんですよ。

──お兄さんとは体型も違えば、ファイトスタイルも全然違いますよね。

宮越 実は兄より僕の方がウエートトレーニングはやっているんですけどね。父は現役時代は筋肉隆々だったので、兄はその遺伝子が強いんじゃないですかね。僕だってあんなバキバキの体になりたいけど、食べた分だけ太る体質なんですよ。

──意外だなぁ。

宮越 ウチ(拳粋会)はキックは高校生からしか教えないので、僕も最初はずっと空手をやっていました。試合に出ていたのは小学生までですね。いまでも空手の稽古は週1回やっているけど、型に興味がある。歳に関係なくできるじゃないですか。空手家である以上、型を極めたいという気持ちはありますね。

──空手以外のスポーツ歴は?

宮越 ずっとバスケをやっていました。中学までは所沢で代表に選ばれていました。高校に入学した時にはプロになりたいと思っていたけど、途中で夢は砕かれました。僕よりうまい人はいっぱいいたし、たっぱ(身長)もなかったのでこれは無理だと悟ったんですよ。でも、将来はスポーツ選手になりたかったので、身近にあったキックを選んだわけです。僕が高校生の頃に兄はすでにプロデビューしていたので、自分も同じ道をたどるのかなと薄々感じてはいたんですけどね。

──すぐ頭角を表した?

宮越 いやいや、父(拳粋会代表の宮越新一氏)からは「お前にはキックのセンスがない」と断言されたんですよ。確かに兄はアマチュア時代から優勝の連続だったけど、対照的に僕は一回戦負けばかり。自分でも才能はないなと思っていました。でも、いまさら別のことを一から始めるのは無理だし、大学進学も考えていなかったので、やるならキックしかないだろうと。

──それもまた意外な話ですね。

宮越 やっていくうちに一般の人よりは才能があると思いました。

──キックを見続けているライターから見ると、新人時代からディフェンス能力に長け、カウンターのヒジ打ちが抜群にうまい印象があります。

宮越 普段からやられないように兄の攻撃を避けていたからじゃないですか(苦笑)。

──知られざる宮越家の秘密(笑)。全てはお兄さんのおかげ?

宮越 そうですね。やられすぎて、それ以上痛いのがイヤで避けるのがうまくなったんだと思います。階級は全然違うし、一発もらうだけでも頭が痛くなってしまうので、もうこれはなんとかしなければいけないとずっと思っていたので、自然とああいうふうに動けるようになったんですよ。

──”ニンジャ”と呼ばれるほどとらえどころのない動きはお兄さんにやられたくないところからスタートしていたわけですね。これまでのキャリアを振り返ってみると、花田元誓、髙橋幸光、水落洋祐、卜部功也、翔・センチャイジム、ガンスワン、鈴木真治らそうそうたる面々から勝利を収めています。

宮越 目の前の試合に集中してやってきただけだけど、よく勝てたなぁと思いますね。いつのまにかここまで来た感じがする。

──ムエタイもヒジなしもどちらのルールでも闘っているけど、強いていえばどちらの方が得意?

宮越 僕はヒジなしの方が得意ですね。

──ヒジありだと思っていました。

宮越 NJKFでデビューした時もルールをよくわかっていなくてヒジなしだと思っていたんですよ。そうしたら「ヒジありだよ」といわれて、エッという感じでした。ただ、父からは小さい頃から「ムエタイのチャンピオンになれ!」と言われていました。

──さすが打倒ムエタイにかけた昭和世代!

宮越 WBCムエタイのインターナショナルも獲ったし、父の夢は叶えたと思うんですけど、目標をどんどん上に設定されるので。そいうえば、父は「タイ人に勝つには辛いものを食べないと勝てない」と言っていました。

──タイ人より辛い料理を食べないと勝てないという発想ですね。日本のキックに根付くマス大山イズムを感じます。

宮越 タイ料理は食べに行かないけど、韓国料理でもワサビでも「我慢して食え」と言われながら育ちました。頭がおかしいですよね。昔のイズムを受け継いでいる。僕は辛党なので平気ですけど、兄は甘党なのでだいぶ苦戦していたと思います。

──宮越家では辛い料理を食べるのも修行のうちだったわけですね。

宮越 いまはもうそんなことはないですけどね。

──お父さんに対して反抗期もあった?

宮越 中高くらいの時にありましたね。文句ばっかり言っていたり、いま考えると練習に差し障りがあったと思うので、父もよく我慢してくれたと思います。父は息子に手を出さなかったけど、代わりに実家の壁にはいくつか穴が空いています。ビデオデッキも壊れましたね(苦笑)。

──お父さんも苦労されていたんですね。

宮越 壁の穴はうまく隠しています。僕が穴を開けたのは障子くらい。

──(笑)。ところで、今回はREBELS初登場で”ムエタイ都市伝説”の異名を持つヤスユキ選手と闘うことになりました。

宮越 いつかはやると思っていたけど、このタイミングとは思わなかったですね。

──選手としてはどんなイメージ?

宮越 淡々とやる選手というイメージがありますね。爆発力というよりは淡々と空いてを壊す。正直やりづらい。ああいうタイプと闘ったことはないですね。

──どんな戦略を立てます?

宮越 たぶん僕はヤスユキ選手では間合いが違うと思う。1ラウンドから向こうは自分の間合いをとりに来るでしょう。そこで僕が考えているのは……。すいません、これ以上はちょっと言えません。

──かいつまんでいうと、間合いをとらせないということですね。

宮越 そうです。この試合は間合いの勝負になると思う。1ラウンド目の間合いを制した方が勝ちます(断言)。

──レフェリーには空気を読んでブレイクをかけるのを最小限にとどめてほしいと思い始めました。

宮越 ヤスユキ選手は打ち合いになったら打ち合いに来てくれるし、つまらない試合はしない。駿太選手との一戦もそうだった。首相撲地獄じゃないけど、そういうふうには攻めてこない。

──素人目にはお互いカウンターがうまいので、どうやって後出しジャンケンを成立させるのかというところにも興味があります。

宮越 あ~、そこはもう駆け引きになるけど、そこは僕もちょっと気になっている。お互い手が出なかったら、どちらかが前に出るしかない。そうなったら、リスクを背負ってでも前に出たい。

──それはお父さんの教え?

宮越 それもあるけど、僕もつまらない試合はしたくない。これは僕の考えですけど、僕からチケットを買って見に来てくれる人は仮に超つまらない試合をして勝ったとしても「良かったね」とほめてくれるでしょう。でも、その数は1000人入る会場だったら、1割にも満たない。残りの900名は「なんだよ、この試合は。見る価値ないじゃん」と酷評するはず。反対に仮に負けて自分の友人知人はガッカリさせても、残りの900名を満足させることができたら興行は成功だと思う。結果的にもっと多くのファンを喜ばせることができるわけですからね。最近はそれがプロなんじゃないかと思っています。

──いや、その考えはまさにプロですよ。今回は超満員になることが予想されています

宮越 なので、気合は入っています。所沢からディファ有明は遠いけど、80名くらいの応援団が来てくれるのでありがたい。所沢から世界へ。僕は地元から世界に羽ばたくヒーローを目指しています。時間が空いたら、地元のいろいろなところに大会のポスターやメッセージを貼ってもらったり、置いてもらうようにしているんですよ。

──所沢をPRするとしたら?

宮越 色はないけど、万能な街なんですよ。もちろんお店もいっぱいあるし、ちょっと奥にいけば畑が広がっている。住みやすい、ちょうどいい街だと思っています。少なくともアスファルトジャングルではない。僕なんか池袋に出たくらいで動悸が止まらなくなって、早く帰りたくなりますから。

──そうした中、一昨年には役者にもチャレンジしたと聞きました(北沢タウンホールで上演された「鬼切姫外伝-承前 -』に出演)

宮越 ハイ。たまたまお話をいただいて、挑戦してみようかと。最初はどうなることやらと不安だったけど、最後の方は芝居にも慣れてきて本当にいい経験になりました。やってみるもんだなと思いましたね。タレント業にも興味があるので、チャンスがあればまたやってみたい。ウチは練習を全うしていれば、ほかに何をやっても構わないという主義なんですよ。元王者より現役王者の方が動きやすいじゃないですか。

──現役王者の方が説得力があるんですよね。話をヤスユキ戦に戻しましょう。ヤスユキ選手より上回っている部分は?

宮越 スピードなら絶対負けない。ライト級だったら、僕が一番早いんじゃないですか。もともとバスケをやっていたせいもあって、一瞬の動きは以前から培ってきたつもり。プロデビューの時からそれを活かせたらと思いながらやっています。それとパンチの切れにも自信がある。

──相手のパンチとは質が異なる?

宮越 質というか種類が違う感じがします。ヤスユキ選手のパンチはかなり伸びる印象がある。決して速くはないし、爆発力もないけど、伸びがあって効く。

──確かに打つべきところで打って効かせる印象があります。

宮越 大月(晴明)戦がそうでしたよね。対蹠的に僕は手数とスピードで勝負するタイプ。そこがどう噛み合うかがポイントになってくると思います。VS日本人だとヤスユキ選手はほとんど負けていないと思うので、この一戦は相当でかい。勝ったら、NJKFにも所沢にも大きなお土産ができる。

──最後はどういうフィニッシュのイメージがある?

宮越 パンチとヒジのミックス──これぞムエタイというK-1にはないような打ち合いの中でフィニッシュしたい。楽しみで仕方ない。試合が終わったら、どんな体になっているのか。どれだけボロボロになっているのかという不安もありますけどね。

○プロフィール
宮越 慶二郎(みやこし けいじろう)
所  属:拳粋会宮越道場
生年月日:1990年1月28日生まれ(25歳)
出  身:埼玉県所沢市出身
身  長:170cm
タ イ プ:オーソドックス
タイトル:WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級王者
通算戦績:29戦20勝(6KO)7敗1分1無効試合

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