梅野源治選手 インタビュー公開!

インタビュー

公開日:2015/10/14

2015年10月18日(日)にディファ有明で行われます「REBELS.39」にて、ソーンコム選手と対戦いたします、梅野源治選手のインタビューを公開させていただきます。

「勝負は3Rから。タイバージョンの梅野源治を見てください」

聞き手:布施鋼治

ーー9月10日、梅野選手がメインイベントに出場したラジャダムナンスタジアム定期戦の興行収益が250万バーツ(日本円にして850万円)と聞いてビックリしました。タイの物価を考えると、とてつもない金額です。

梅野 これまでなかなか外国人選手が平日の興行に出るというのは今までなかったですからね。(※日本とは異なり、タイでは平日にビッグマッチが組まれる。土日は新人戦が中心) 

--決戦4日前、バンコクに到着した時点から今までとは違っていた?

梅野 空港に到着した時点でラジャダムナンスタジアムのプロモーターやWBCムエタイの関係者が出迎えてくれました。外国人選手がタイで試合をするからといって、なかなか空港まで迎えにきてくれることなんてないじゃないですか。選手が実費でタイに行って、現地では「試合をさせてやる」という感じが多かったと思います。

--まさに異例中の異例ですね。そこまで期待されたら、心の高ぶりを感じた?

梅野 そうですね。試合の3日前からはテレビの取材や公開練習が組まれたんですよ。公開練習には現地の記者が結構集まってくれたので、「タイでも僕の試合を楽しみにしてくれる人はたくさんいるんだな」とプレッシャーではないけど、「いい試合をしなきゃ」と思いましたね。

--今年5月、名古屋でいまタイでは人気・実力ともトップ5に入るといわれるムアンタイ・PKセンチャイジムにKO勝ちしたことで、梅野選手のタイでの評価は決定的なものになったという話を聞きました。

梅野  当時ムアンタイはラジャとルンピニーのランキング1位で、それまでKO負けをしたことがない選手でしたからね。ムアンタイとやる前、ウチのタイ人トレーナーからも「アイツに勝ったら、タイでは相当なニュースになる」と言われていました。勝った直後、周囲のタイ人が相当騒いでいたので、反響は大きいんだろうという予感はありましたね。

--案の定、その反響はラジャダムナンスタジアムがフルハウスという形になって現れたと。

梅野 席数はいつもの2倍以上あったと聞きました。一番前の席数も増やされていましたね。一番うしろ(3階席)のギャンブラーのための席までパンパンでした。あんなラジャダムナンは見たことがなかったですよ。ただ、「僕の試合のために集まってくれたんだ」と思うと、やっぱりプレッシャーになりましたね。

--そのプレッシャーが災いとなった?

梅野 う~ん、そうですね。プレッシャーもありましたし、向こうでもセクサンというトップ中のトップとやるとなると、ギャンブラーの賭け率も変わってくる。もうひとつ向こうは当日計量じゃないですか。日本でやるのとはいろいろ環境が違っていたので、いろいろ理由はあるけど、あの環境、あの状況の中で自分を100%信じきって闘うことができなかったんじゃないかと思います。

--それはいつ頃から?

梅野 試合の日になってからずっとそうだったと思います。

--自分の中で葛藤があった?

梅野 そうですね。試合当日もやっぱり賭け率は引き離されているし、ウチのトレーナーも「ダウンを奪うかKOでないとギャンブル的に厳しい」と言うので、「倒さなきゃ倒さなきゃ」というのはありました。で、実際に試合になったら、セクサンのミドルキックはそんなに早くなかった。パンチも思ったよりは打ってこない。

--どちらかというと、守りのファイトだったわけですね。

梅野 大会前のインタビューでは「1Rから梅野をKOする」と豪語していたんですけどね(苦笑)。蹴りはミドルキック以上のことをしてこない。パンチでKOを狙ったり、ヒジで倒してきたりというのもなく、ひたすら守る。それを1R目からやられて、僕は「ああ、こんなものか」と思ったんですけど、3Rになっても(その姿勢は)変わらなかった。守って守って、たまに左ミドル。あるいは、たまに組み付いて投げる。その動きに徹底していた。打ち合ってくれないわけです。日本だったら僕にポイントがつくけど、タイだとどうしても僕が手数を出せば出すほど賭け率は引き離されてしまう。

--絶対安全運転というわけですね。

梅野 そうですね。3Rの途中からは「これは一発目から当てていかないとダメだ。判定までいったら絶対に勝てない」と思いました。しかし、ここまで徹底的に守られると、「本当に倒せるか?」という不安な気持ちも出てきた。今までだったら倒さないと勝てないとわかった時点で、とにかくガムシャラにでも殴ったり蹴ったりしていたと思うんですけどね。でも、今回は打っていく中で、「今日は倒せないんじゃないか」と考えながら戦っていましたね。

--「絶対に倒さなきゃ」と「倒せないんじゃないか」というふたつの気持ちの間で揺れ動いていたわけですね。試合が終わってからはどんなことを考えました?

梅野 まずは(タイでも)「本当に倒さなきゃ勝てないのか?」という疑問が沸いてきました。ローキックで倒すなら1Rから行くしかない。だから僕は「1Rから行く」と主張したけど、トレーナーからは「それではスタートが早すぎる。3Rから行け」と言う。僕は「3Rからだったら奥足を狙ってのローではKOは難しい」と答えました。結局どういうスタイルにすればいいのか。いまだによくわからない。KOしないで勝てるのであれば、僕だってもちろん1~2Rはセーブして闘いますよ。

--ムエタイの迷宮にハマってしまった?

梅野 自分が思うタイでの闘い方とトレーナーが考えるそれがうまくリンクしていない。帰国してから、トレーナーと加藤(督朗)会長と3人で話し合いました。日本でタイの強豪に勝っているということで、僕の名前は向こうでもそれなりに知られている。そこで相手は最初から警戒してくるので、賭け率で勝っていたら最初から逃げる。今後もタイで僕との闘いになれば、逃げながら闘う選手が多いんじゃないですかね。セクサンのように普段はバリバリ前らに出てくるファイタータイプでも下がるならば、テクニシャンとやったらどうなるのか。セクサンよりさらに下がってミドルを蹴りながら逃げる戦法をとるような気がします

ーー向こうが究極のポイントゲームに徹するということは、それだけ梅野選手のマークが厳しくなっているという裏返しとも受け取れます。

梅野 そうですね。なので、今回は「ダウンをとらないと勝てない」という考えは捨てます。1~2R、パンチも奥足ローもヒザも打つけど、いつもよりもう少し手数を減らして重要といわれる3~5Rで勝負をかけたい。トレーナーにも、今回は僕の意見でやると伝えました。トレーナーの意見を聞いたうえで最終的には僕が判断するということです。彼も「やってみな」と納得してくれました。

--舞台は日本ながら、今回はタイバージョンの試合を見せてくれるということになりますかね。

梅野  ハイ、今までの日本のスタイルとはちょっと変えます。もちろん途中でチャンスがあれば倒しに行きますけどね。本当の勝負は3Rから。そこからを楽しみにしてほしい。

--今回闘うソーンコム・シットナーヨックサンヤーはラジャダムナンスタジアムの元フェザー級王者で、現在は同じスーパーフェザー級7位にランクインしている選手です。

梅野 パンチとローが得意なファイタータイプですね。あとは首相撲。相手によって闘い方はどんどん変えてくるけど、誰が相手でも下がらない。僕が今年7月にやったペットプーンチューともやっています。長身のペットプーンチューに対してソーンコムはパンチとローで攻めていましたね。僕も長身なのでソーンコムはパンチとローで来る可能性が高い。ただ、僕は外国人ということで向こうは「首相撲になっても負けない」という自信があると思う。基本的にはパンチとローだけど、組み付いていることも多いと思うので、その3つを気をつけながら闘おうと思っています。

ーーちょっと気が早いけど、年末には再びラジャダムナンスタジアムに乗り込む話があると聞きました。

梅野 ハイ。12月3日に行なわれるラジャダムナンスタジアム設立記念興行に呼ばれています。まだ具体的な話は僕のところに一切来ていないけど、すでにタイの専門紙には載っているみたいです。

ーーさすがタイ(笑)。

梅野 主催者は前回と同じソーソンマイさん(いまムエタイでは最も昇り調子といわれるプロモーター)。またこちらから出る意志を見せたら出ることになるでしょう。
ーーだって、すでに発表されているわけですからね。だったら今回ソーンコムに気持ちよく勝って次につなげたい

梅野 そうですね。ソーンコムはラジャでも有名だし、すごくいい相手だと思う。そういう相手に対してタイで闘うようなイメージでやって、採点基準もここはタイだと思って結果を残せたら最高ですね。そういう強豪と闘うことで、自分もどんどん強くなれると思う。それに、ソーンコムに勝つことはまた日本で実績を作ることにもなる。タイの関係者からも「あっ、やっぱり梅野は強かったんだ。だったらもう一度タイで見たい」と思わせるのがベストなんじゃないですかね。

○プロフィール
梅野源治(うめの げんじ)
所  属:PHOENIX
生年月日:1988年12月13日
出  身:東京都
身  長:178cm
タイトル:WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王者
通算戦績:38戦31勝(16KO)6敗1分

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